炭素クレジットで売上約2,400億円 テスラの知られざるサイドビジネス

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  1. 年間売上約2,403億円 炭素クレジットビジネスの仕組み
  2. 環境規制政策の後押し
  3. 意外な側面 たばこ会社よりも低いESGスコア

年間売上約2,403億円 炭素クレジットビジネスの仕組み

テスラのカーボンクレジット売上高(炭素クレジット)は2022年に過去最高の17億8,000万ドル(約2,403億円)に達しました。前年に比べ約120%増加し、同社の総売上の約3%に相当します。テスラは、電気自動車(EV)の製造に加え、ソーラーパネル設置事業を運営し、エネルギー貯蔵システムを販売しています。これらの事業により、温室効果ガス排出量の削減を通じてカーボンオフセットクレジット(排出権取引のクレジット)が生成されます。これらのクレジットは、CARB などの規制機関によって設定された排出基準を満たすのに苦労している自動車メーカーなど、他の企業に販売できます。
テスラは少なくとも 8 四半期連続でカーボンククレジットの販売から収益を上げており、本業のEV事業が赤字だった時期には、カーボンクレジットの販売益が会社を支えていました。 テスラのカーボンクレジットの売上高は長年にわたって増加しており、収益と利益に着実に貢献していることが証明されています。

環境規制政策の後押し

テスラの炭素クレジットビジネスは、アメリカ政府の環境政策と密接に関係しています。
●競合に対する規制:
2019年、テスラはカリフォルニア大気資源委員会(CARB)が定めた排出基準を満たしていない他の自動車会社へのカーボンクレジットの販売で3億5700万ドル(約481億円)を稼ぎました。一方、これらの企業は、テスラからカーボンクレジットを購入することで、自社の業務に大幅な変更を加えることなく規制を遵守できるようになりました。テスラは、多くの自動車メーカーに対し、基準に準拠する手段としてカーボンクレジットを販売しており、クライスラーはこれまでにテスラのカーボンクレジットを24億ドル(約3,240億円)購入したと報告されています。
●自社に対する補助金:
政府機関や地方公共団体は、顧客がテスラの電気自動車や太陽光発電の購入する際に、リベートや税額控除の形で補助金を提供しています。アメリカでは、インフレ抑制法により、2023 年 から特定の電気自動車 (EV) は最大 7,500 ドル(約100万円)の税額控除を受けることができます。

意外な側面 たばこ会社よりも低いESGスコア

環境に良い印象が強いテスラですが、ESGスコアが低いことは余り知られていません。持続可能な投資に焦点を当てた市場指数であるS&P 500ESG指数 は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の各カテゴリーで企業を 100 点満点で評価します。テスラのESG指数は37点だったのに対し、タバコ会社のブリティッシュ・アメリカン・タバコが88点、フィリップ・モリスが84点と大幅に上回っています。また、石油大手のシェルは41点で、テスラよりも高いことがわかります。これは、テスラの環境面以外の評価が低いことが関係しています。各カテゴリごとのスコアを見ると、環境では、60 点を獲得しているものの、社会で 20 点、ガバナンスで 34 点と他の2つのカテゴリの点数が低かったことがわかります。
また、テスラは2022年、人種差別の主張や自動運転車に関連した事故などの問題を理由にS&P500ESG指数から除外されていましたが、電気自動車メーカーが環境開示を追加したことを受け、2023年6月S&P500ESG指数に復帰しました。

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